おっさんは何処へ行った?
大阪には「天神橋筋商店街」という日本一長い商店街がある。
天神橋筋1丁目から7丁目まで、延々2.6キロメートル続くが、1丁目、2丁目と数字が上がるほどディープさを増し、5丁目辺りから、それはもうクッキリと様相が変わる。
私は今から30年ほど前、ディープさが最高潮となる天神橋筋6丁目、通称「天六」に住んでいた。
商店街から少し路地に入ると、いかにも”場末”という形容がぴったりのうらぶれたスナックや、ストリップ小屋があって、昭和のにおいがプンプンする、それはそれは楽しい地域であった。
昨日、久しぶりに会った友人と、この懐かしい天六へと出かけて来た。
改札を出たあたりから、ん?なんか違和感が。
日曜日だからなのか、駅前にわらわらと若者が群がっている。
おかしい、おっさんがいない。
この界隈は正統派おっさんの生息地であるはずなのに、ひとりもいない。
天六に隣接する中崎町というエリアがあるが、ここは昔、サラリーマン系おっさんの聖地であったのにいつの間にか隠れ家風カフェだの雑貨屋だの、雑誌「SAVVY」が特集を組むような街に成り下がり、おっさんが消えた。
その波がじわじわと天六まで押し寄せているのであろうか。
それはさておき、何を食べるかぶらつきながら決めましょかということで路地裏を散策。
そうそう、この猥雑な感じ、昔と変わってないやん!
ごちゃごちゃと小汚い店が所狭しと並んでいる。どれどれと中を覗くと、
何と流行りのバル風居酒屋ではないか。
右を見ても左を見ても、中は小洒落たしつらえで若者たちで賑わっている。これじゃおっさんは入りにくかろうな。
焼肉屋であろうが焼き鳥屋であろうが、
み〜〜んなさりげなく今風に変わっている。
この一見、小汚い風というのがなかなか芸が細かい。
何やら不思議な熱気に包まれてぶらついてるうちに、日本ではないアジアの何処かの空間に迷い込んだような気になってくる。
そう言えば商店街も路地裏も、昔は夜も8時になれば閑散としていた。そのうらぶれ感が味わい深かったが、街が元気だったかと言えば話は別だ。
街は確かに活気に満ちている。
地べたに座ってバケツに漬け込んだ手作りキムチを売る、韓国人のオバちゃんはもう居ないし、店構えも中もホンマに汚い赤提灯の立ち飲み屋も無くなったけれど。
そうか、おっさん達は街を卒業したんやね。
ワシらもう充分遊んだわ。後は任せたで!と、
若者達にバトンを渡したんやろ。
街も生き物。新陳代謝を繰り返しながら、
時代に合った形に変わって行く…。
幻のおっさんに想いを馳せながら、
どっぷりとノスタルジックな気分に浸れた
天六散策でありました。